1. 拡張コンバージョンとは
拡張コンバージョンは、Google広告が提供する高度なコンバージョントラッキング機能の一つです。通常のコンバージョントラッキングは、ユーザーが広告をクリックした後にサイト内で特定のアクション(購入や問い合わせなど)を行ったかどうかを計測しますが、拡張コンバージョンはそれに加えて、ユーザーの入力した顧客データ(メールアドレスや電話番号など)を安全にハッシュ化し、Googleのシステムと照合することで、より正確なコンバージョン計測を可能にします。
これにより、広告経由の成果を見逃すリスクが減り、特にCookie制限やトラッキング防止技術が増えている環境下でも、効果測定の精度が大幅に向上します。例えば、コンバージョンに至ったユーザーの属性がより正確に判明し、広告の最適化やターゲティング精度の向上につながります。
2. Google広告で行う設定
拡張コンバージョンの設定は、まずGoogle広告の管理画面で対象のコンバージョンアクションを選択し、「拡張コンバージョンを使用する」オプションをオンにすることから始まります。
具体的には以下の手順です。
- Google広告にログインし、上部メニューから「ツールと設定」>「コンバージョン」を選択。
- 計測したいコンバージョンアクションをクリック。
- 「設定」セクションで「拡張コンバージョンを有効にする」のチェックボックスをオンに。
- 変更を保存。
この設定により、Google広告側で拡張コンバージョンデータの受け入れ準備が整います。ただし、サイト側での顧客データ収集や送信設定も必要ですので、次のステップとしてGoogleタグマネージャーや直接タグの調整が求められます。
3. Googleタグマネージャーで行う設定
Googleタグマネージャー(GTM)を活用することで、拡張コンバージョンの導入がより柔軟かつ管理しやすくなります。GTMでの設定方法は主に3つのパターンに分かれます。
3.1 三つの設定方法
- 自動収集による設定
- 手動設定による設定
- 混合型の設定
この中で多くのケースで使われるのは、自動収集と手動設定です。
3.2 「自動収集」での拡張コンバージョンの設定方法
自動収集は、顧客がフォーム入力時に提供した情報をGTMが自動的に取得し、拡張コンバージョンに利用する設定です。設定の前提として、コンバージョンページ(例:完了ページ)で顧客データが取得可能なことが重要です。
3.2.1 コンバージョンを設定しているページで顧客データを取得できる場合
- GTMで該当のコンバージョントリガーを開きます。
- 「タグ」設定で「Google広告コンバージョンタグ」を選択。
- 「拡張コンバージョン」セクションを展開し、「自動収集」を選択。
- 変数にメールアドレス、電話番号、氏名などのフォームフィールドを指定。
- タグの発火条件をコンバージョン完了ページのトリガーに設定。
- 変更を公開し、テスト。
この方法はタグのカスタマイズが少なく、比較的簡単に導入可能です。
3.2.2 コンバージョンを設定しているページで顧客データを取得できない場合
例えば、入力フォームの情報が完了ページに渡らないケースや、動的なSPA(Single Page Application)でページ遷移がない場合などです。この場合、自動収集は難しくなるため、手動設定が推奨されます。
3.3 「手動設定」での拡張コンバージョンの設定方法
手動設定は、顧客情報をJavaScriptなどで明示的にGTMへ渡し、そこからGoogle広告タグへ連携する方法です。フォームの構造が複雑な場合や、取得する顧客情報が多い場合に有効です。
3.3.1 コンバージョンを設定しているページで顧客データを取得できる場合
- フォームの送信イベントをトリガーとしてGTMで設定。
- フォーム内の各フィールド(メールアドレス、電話番号など)を変数としてGTMで登録。
- Google広告の拡張コンバージョン用のタグにこれらの変数をマッピング。
- タグ発火のタイミングをフォーム送信完了時に設定。
- GTMのプレビュー機能で動作確認し、公開。
3.3.2 CSSセレクタの確認方法
顧客データ取得のためには正確なCSSセレクタの指定が重要です。Chromeのデベロッパーツールなどを活用して、入力フィールドのIDやクラス名を調べ、GTM変数として設定します。これにより、正しいデータを取得し、Googleに送信できます。
3.3.3 コンバージョンを設定しているページで顧客データを取得できない場合
動的ページや非同期読み込みが多い場合は、JavaScriptでDOM変化を監視するカスタムコードをGTMに組み込む必要があります。専門的な知識が求められるため、開発者と連携しながら実装することが望ましいです。

4. コンバージョン設定時の注意点
拡張コンバージョンは非常に有用な機能ですが、設定を誤ると計測精度が落ちたり、プライバシー保護の観点で問題が生じたりする恐れがあります。以下のポイントに留意しましょう。
4.1 Webサイトに変更を加えると正しく動作しなくなる可能性がある
特にフォームの構造変更やHTMLの改修を行う場合、GTMの変数やタグが取得するデータの場所が変わり、拡張コンバージョンの計測に影響を与えます。定期的にタグの動作確認や更新が必要です。
4.2 電話番号は、E164規格の形式にする
拡張コンバージョンで電話番号を送信する際は、国際標準のE164形式(例:+81-90-1234-5678)でフォーマットすることが推奨されます。これによりGoogle側で正しく認識され、データのマッチング精度が向上します。
5. 拡張コンバージョンの動作検証方法
設定後は、Google広告管理画面の「拡張コンバージョン」レポートやタグアシスタントツールを使って動作検証を行います。
- Googleタグマネージャーのプレビューモードでタグが正しく発火しているかを確認。
- 実際のコンバージョンページで顧客情報が送信されているか確認。
- Google広告の「コンバージョン」画面で拡張コンバージョンデータの受信状況を定期的にチェック。
正しく設定されていれば、通常のコンバージョン数に加え、拡張コンバージョンとして追加の成果計測が行われていることがわかります。
6. まとめ
拡張コンバージョンは、Cookie制限やトラッキング環境の変化に対応しつつ、広告成果を正確に計測するための重要な機能です。Google広告の管理画面での設定に加え、Googleタグマネージャーを活用した詳細な導入手順を押さえることで、効果的に運用できます。
特にフォーム構造やサイト環境に応じて自動収集か手動設定かを選び、正しい顧客データの取得と送信を実現することが成果向上の鍵となります。導入後もWebサイトの変更に伴う調整や定期的な動作検証を欠かさず行いましょう。
正確なデータ計測を実現することで、広告の最適化やROI改善に大きく貢献するため、ぜひ拡張コンバージョンの導入を検討してみてください。