1. はじめに
ディスプレイ広告とリマーケティングの役割
Google広告におけるディスプレイ広告(GDN:Google Display Network)は、検索広告ではリーチできない「潜在顧客」や「検討中ユーザー」にアプローチできる手段です。たとえば、検索行動はしていないが、関連性の高いWebサイトやYouTube動画を見ているユーザーに対して広告を出せるため、「まだ検討段階にすら入っていない層」にもアプローチ可能です。
特にディスプレイ広告×リマーケティングの組み合わせは非常に強力です。これは、過去に一度でも自社サイトを訪れたユーザーに対して広告を出し直すことで、「忘却防止」や「検討の後押し」として機能します。サイト訪問後、1週間〜1ヶ月の間にリマーケティング広告を出すことで、顕在層へと確実にリーチし、CV(コンバージョン)を後押しすることが可能になります。
たとえば、以下のようなセグメントにリマーケティングを設定するのが一般的です:
- サイト訪問者全体(All Visitors)
- 商品ページ閲覧者(特定のURLに基づく)
- カート投入者・フォーム入力者(完了しなかった人)
- 資料請求済みのユーザー(LTVアップを狙う)
このようなセグメントごとにCVR(コンバージョン率)やCPA(獲得単価)を比較しながら、配信戦略を調整することで、リマーケティングは広告運用における「安定収益源」として活用されます。
リマーケティングで成果が出たあとの展開
ただし、リマーケティングは“既存の訪問者データ”に依存するため、リストが小さいとインプレッション数やクリック数に限界があります。特に月間UU(ユニークユーザー)が数千未満のWebサイトでは、広告予算を最大限に使い切れず、CVの伸び悩みに直面します。
そこで重要になるのが、「リマーケティングのデータをベースに、新しい見込み客層へと拡大する戦略」、つまり類似ユーザー(Similar Audiences)の活用です。
類似ユーザーを活用することで、既に成果が出ているユーザー像に“近い”新規ユーザー層にディスプレイ広告を配信できるようになります。
これは、リマーケティングの延長線上で効果を最大化するための次なる一手であり、「成果を出すための拡張戦略」として極めて重要です。

2. 類似ユーザーとは何か?
Google広告における「類似ユーザー(Similar Audiences)」の定義
「類似ユーザー(Similar Audiences)」とは、Google広告において、リマーケティングリストに含まれるユーザーと行動傾向が似ているとGoogleが判断した新規ユーザー群です。
例えば、「商品Aの購入完了者」や「資料請求完了者」など、過去に高いCV率を示したユーザーをオーディエンスリストとして蓄積しておくと、Googleはそのリストの中から特徴(検索履歴、閲覧履歴、動画視聴、アプリ利用など)を機械学習で抽出します。その特徴に基づいて、類似のオンライン行動をしているが、まだサイトを訪問していないユーザーを自動的に見つけて配信対象にしてくれるのが、類似ユーザー機能です。
元になるオーディエンスリストと行動パターンの類似性
類似ユーザーの精度と効果は、元となるオーディエンスリストの質に大きく左右されます。
以下のような元リストを使うと、精度が高まりやすいです:
元リストの例 | 類似ユーザーの精度 | 備考 |
---|---|---|
コンバージョンしたユーザー(CV済み) | ◎ 非常に高い | 意図が明確で強い行動指標があるため |
商品ページを複数回見たユーザー | ◯ やや高い | 関心が明確なのでターゲティング精度が上がる |
サイト訪問者全体 | △ やや低い | 意図がバラバラなので精度が落ちる可能性がある |
特に成果を出しやすいのは、「CV済みのユーザー」の類似リストです。たとえば、「30日以内に資料請求したユーザー」のリストをもとに、類似ユーザーを作成し、見込みの高い“新規ユーザー”への拡張リーチを行う、というのが実践的な活用法です。
補足:2023年後半より、Google広告では従来の「類似ユーザー(Similar Audiences)」機能が段階的に廃止され、より自動化された「最適化ターゲティング(Optimized Targeting)」や「拡張コンバージョン」への移行が進んでいます。
ただし、概念的には似た行動パターンに基づく拡張配信であるため、「類似ユーザー的なターゲティング」は今後も実質的に使い続けられます。
3. リマーケティング後の展開戦略
コンバージョンユーザーに基づく類似ユーザー活用の意義
リマーケティングによって一定のCV(コンバージョン)データが蓄積された段階では、それを基にした「拡張戦略」に移行することが重要です。その第一歩として有効なのが、「コンバージョン済みユーザーに基づく類似ユーザー(Similar Audiences)」の活用です。
この戦略の意義は以下の3点に集約されます:
1. 行動的・関心的に最も“濃い”ユーザー像をベースに拡張できる
CV済みユーザーは、最も「目的意識」や「ニーズ」が明確なセグメントです。そのユーザーの閲覧傾向・検索傾向・興味関心をGoogleが学習し、類似行動を持つユーザー群に広告を配信することで、無駄打ちを最小限に抑えた新規顧客の獲得が期待できます。
2. CPA(顧客獲得単価)を抑えつつスケールしやすい
リマーケティングだけでは、広告配信の対象が「過去に訪問した人」に限定されるため、いずれ頭打ちになります。類似ユーザーは新規ユーザーへのリーチを広げつつも、CPAが著しく悪化しにくい傾向があるため、拡張性と効率性のバランスが取れた手法です。
3. 検索広告では拾えない“潜在層”へのアプローチが可能
検索広告は「明確なニーズを持ってキーワード検索している人」にしか表示されません。しかし、類似ユーザーは検索キーワードでは捕捉できないが、実際には高い関心を持っているユーザー(情報収集中など)も含まれます。こうした「認知〜検討フェーズ」への接触は、ディスプレイ広告ならではの強みです。
リマーケから類似ユーザーへ:拡張のタイミングと理由
【拡張のタイミング】
以下のような状況が揃ったら、「類似ユーザーによる拡張施策」に移行するべきです:
タイミング | 判断基準 |
---|---|
CVが安定して発生している | 1ヶ月あたり30CV以上が目安(Googleが機械学習しやすい) |
リマーケのフリークエンシーが高まっている | ユーザーに対して広告表示が過剰になってきた兆候 |
リマーケのリスト規模が飽和してきた | インプレッションやクリック数の伸びが鈍化 |
配信予算を増やしたいが使い切れていない | 予算消化効率を上げる必要がある |
リマーケティングだけではCVが伸び悩んできた段階で、類似ユーザーに展開することで“打ち手”を追加しながらリーチを拡大できます。
【拡張の理由】
類似ユーザーを活用する最大の理由は、「成果が出る可能性の高い新規ユーザー」に広告を配信できるからです。
たとえば、資料請求フォーム完了者のリストから作成した類似ユーザーにディスプレイ広告を出せば、「まだ自社を知らないが、将来的に資料請求しそうな行動特性を持つユーザー」への先回り接触が可能です。
また、検索広告よりもCPC(クリック単価)が安くなりやすいため、新規獲得の効率も良好なケースが多く、特にBtoBや高額商品領域では効果的です。

4. 類似ユーザー配信の基本設定方法
1. 類似ユーザーリストの自動生成(※現在は制限あり)
これまでGoogle広告では、「リマーケティングリスト」や「顧客マッチリスト(メールアドレス等)」をアップロードすると、それに基づいて**自動的に類似ユーザーリスト(Similar Audiences)**が作成されました。
しかし2023年以降、以下のような仕様変更が段階的に実施されています:
内容 | 状況(2025年現在) |
---|---|
新規類似ユーザーリストの自動生成 | 廃止(2023年5月に終了) |
既存の類似ユーザーリストの利用 | 一部キャンペーンで使用可(終了予定) |
推奨される代替手段 | 「最適化ターゲティング」または「オーディエンス拡張」 |
重要ポイント:
現時点では「類似ユーザー」という明示的なターゲティング項目は新規作成・追加できません。今後は以下の設定に切り替えていく必要があります。
2. 「オーディエンスマネージャー」での確認と管理方法
Google広告管理画面 > ツールと設定 > 共有ライブラリ > オーディエンスマネージャーにて、以下の内容が確認可能です:
- 過去に作成された類似ユーザーリスト(表示は継続されるが、新規追加不可)
- 顧客リストやウェブサイト訪問者リストなどの「元リスト」
- 「リストサイズ」や「有効期限」「作成日」「利用可能な広告タイプ」
補足:
- 既存の類似ユーザーリストがキャンペーンに使用されている場合、通知なしに自動的に“最適化ターゲティング”へ移行されることがあります。
- 「オーディエンスマネージャー」は今後、より“セグメント管理”として位置づけられていく見込みです。
3. ターゲティング設定の実例
類似ユーザー配信が廃止された今、実際のターゲティングは次の2つの方法にシフトしています。
【A. 最適化ターゲティング(Optimized Targeting)を使う】
これはディスプレイ広告・動画広告キャンペーンで使用可能です。
設定手順:
- 新規ディスプレイ広告キャンペーンを作成
- 広告グループの「オーディエンスセグメント」で、元リスト(例:コンバージョン済みユーザー)を指定
- 「最適化ターゲティング」のチェックをON(デフォルトで有効)
- Googleが自動で「類似傾向のある新規ユーザー」にまで配信を拡張
特徴:
- 配信先はブラックボックス(リストの中身や重複は見えない)
- 類似ユーザーの代替として推奨されている方法
- パフォーマンスに応じて機械学習が自動調整
【B. オーディエンス拡張(Audience Expansion)を使う】
これは検索広告・YouTube広告で利用可能です。
設定手順:
- 検索キャンペーンなどの広告グループ編集画面へ
- 「オーディエンスセグメント」を指定(例:購入者リスト)
- 「オーディエンス拡張」のスライダーを有効にする(スライダーで拡張レベル調整)
特徴:
- 指定したオーディエンスに加えて、「行動傾向が似ているユーザー」にも自動で配信が広がる
- かつての類似ユーザーの代替的機能
- 管理者がスライダーで「拡張の強さ」を調整できる
【補足】カスタムセグメントとの併用例
Google広告では、以下のような独自の条件で作成したセグメント(カスタムセグメント)もターゲティングに活用できます。
- 「特定キーワードで検索したユーザー」
- 「特定のURLを訪問したユーザーに類似の傾向がある人」
- 「興味関心(例:相続・資産運用・事業承継)を持つ層」
これらを元にキャンペーンで「最適化ターゲティング」や「オーディエンス拡張」と併用することで、より精度の高い新規獲得が可能になります。
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